鉄輪(かなわ)

概要

 地歌より取材。能でも有名な演目です。

 離縁された女が、元夫と後妻を恨んで丑の刻参りを続ける内、やがて本物の鬼となり、呪いの力で二人の命を追い詰めるまでに至るというお話です。

 鉄輪とは五徳ともいい、火鉢の中に立てて鉄瓶を上に載せる道具ですが、これを逆さまにして頭にかぶり、脚の部分に蝋燭を立てて燃やせば望みが叶うというご神託を、女は貴船神社から受けたのでした。

編成
楽器人数立ち位置備考
1名以上奥上手か下手旋律を奏でる。本曲の導入部は特に聞かせどころ。
太鼓1名中央奥本曲専用の太鼓で、緩急自在の表現を行う。
カタ数名上手・下手に各縦列太鼓に合いの手を入れる。
二丁吊り1名奥上手か下手
口唱歌

「悪しかれと 思わぬ 山の峰にだに シャン (イーヤ) チンソレチンソレシャン ア チンシャン 人の心は 生うなるに (イーヤ) いわんや 年月 思いに沈む 恨みの数 積もりて シャンシャン (イーヤ) 執心の テンテン 鬼と成るも ことわりヤ ツーテシャンシャン ツテツ チンツツン チーレツツ ツツテシャンシャン チチレチレチンツン チンツン チチレツ チーチレエエ チンーツン ツンチーレツツーン 髪を手にから巻いて 打つや うつの山の 夢うつつとも はかない浮世に チリチリツンテン チーレツンーツン 因果巡り合いたり 今さらサラサアラ 悔しかるらん (イーヤ) さて懲りや 思いしれ」

特長

 壬生六斎では、この曲にのみ独自の解釈法が伝わっています。それによれば、執念の鬼と化してしまった女性を一人の思い迷う人間として捉え、自分達と彼女とでは何ら異なる所はないのであるから、彼女の苦しみや悲しみを真剣に考え、後悔のないように自戒して生きようという意図の、前向きなありがたい曲だとされています。

 原曲のイメージを残しつつ、各楽器の見せ場と、緩急の起伏を加えて丁寧に編曲した、壬生六斎きっての出色の作品であり、独自の解釈とも相まって、代表曲ともいうべき貴重な曲目です。また、スローな箇所は、念仏の節回しに近いとも言われています。

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